社会的参照と視覚的断崖実験
社会的参照とは
社会的参照とは、子供が行動する前に重要な他者の反応をうかがって行動を決定するような現象を言います。
およそ1歳前後から社会的参照が見られると言われています。
例えば、子供が転んだ時に、親の「そのくらい大丈夫だよ」という顔を見れば、
安心して行動を続け、
「大丈夫かな?」と心配そうな顔をしていれば泣いたりします。
社会的参照を示した視覚的断崖実験
視覚的断崖の実験とは、知覚心理学者のギブソンらが行った実験で、社会的参照を証明するものでした。
視覚的断崖実験では、赤ちゃんがのる透明な台を用意します。
そして、台の前では、赤ちゃんのお母さんが心配した表情をする場合と、楽しそうな表情を
する場合にわけて、赤ちゃんが透明な台を渡ってお母さんの所までハイハイして行くかを見ました。
社会的参照実験の結果、お母さんが心配そうな顔をしたとき、赤ちゃんは透明な台を渡ってこず、楽しそうな顔をしたときは、透明な台を渡って来ました。
視覚的断崖実験でわかったこと
視覚的断崖実験でわかったことは、赤ちゃんが母親の表情を見て、行動を選択したということです。
言い換えれば、空気を読んだ、と言うことになるかもしれません。
社会的断崖実験でこのようなことがわかりましたが、現在でも、赤ちゃんの社会的参照能力を調べるために視覚的断崖を用いることがあります。
日常で見られる社会的参照
視覚的断崖でなくても日常でも社会的参照は見られます。
例えば、赤ちゃんが頭を打った、転んだ、このような場面でも社会的参照が見られます。
赤ちゃんが頭を打ったとき、母親の反応を見て、心配そうなら泣き、笑っていれば、平気な顔で泣かずに
済むかもしれません。
大人の場合、例えば会議で発言したときに、
自分の発言が妥当なものであったのかどうかを、周囲の返答や発言から判断することがあります。
これも社会的参照と考えられます。
このように、周囲の反応を見て行動を決めること、を社会的参照と言います。
発達障害と社会的参照
自閉症児は社会的参照能力の欠如と関連があると言われています。
社会的参照に障害のある自閉症スペクトラムの子供は、
他人の感情を推測してそこから適切な行動をとることが難しくなります。
そのため対人関係に問題が生じます。
社会的参照は共同注視の一形態と考えられますが、
共同注視は定型発達の子供では生後6ヶ月から18ヶ月で見られます。
自閉症スペクトラムの子供は共同注視が欠如する傾向があります。
社会的参照に関する実験で、室内にいる児童に動物の鳴き声のような音を聞かせる実験が行われています。
実験の結果、自閉症児を含めた発達障害児群は、定型発達の児童と比較して、音がなった時に大人を見る回数が少なかったことがわかっています。
つまり、自閉症児は社会的参照をすることが少ないということができます。
また共同注視が見られる子供は比較的言語能力が障害されにくいという研究結果もあります。
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