カテゴリー「臨床心理学(心理療法)」の11件の記事

2013年11月 4日 (月)

精神分析とクライエント中心療法の違い

快楽原則によるエスの働きを一次過程

心理系大学院の院試では、しばしば「~療法と~療法の違いを述べよ」などの論述問題が出題されます。
なので試験対策として有名な心理療法同士の違いを説明できることは必須です。

精神分析の特徴

○過去に焦点を当てる

フロイトの精神分析では、神経症の原因を無意識に抑圧された未解決な過去の出来事に求めます
そのため、精神分析的治療では過去に焦点を当てた技法が使われます。
二大技法である言語連想法と夢分析も無意識に抑圧された過去をひっぱりだすために用いられます。

○指示的である

また精神分析は指示的であるのが特徴です。

言語連想法でも夢分析でも、カウンセラー側は、意図を持って指示を与えます。 例えば言語連想法では「思いついたものを言ってください」と指示をします。

さらに精神分析では、無意識に抑圧された過去の事柄についてクライエントに解釈を与えます(解釈投与と言います)。解釈を与えるのもある意味で指示的と言えます。

クライエント中心療法の特徴

○非指示的
クライエント中心療法(来談者中心療法)の特徴は、精神分析と違って非指示的と言われます。
以前は、非指示的療法と呼ばれていたくらいです。
クライエント中心療法では、カウンセラーが3つの必要十分条件を満たすだけで自己実現が発揮されると考えられ、クライエントが向かうべきところもクライエント自身が一番良く知っていることを前提にしているので、基本的に指示はしません。 3つの必要十分条件とは、共感的理解、無条件の肯定的配慮、自己一致でした。
※必要十分条件がわからない方は、過去記事のをもう一度見てください。

○症状の原因に焦点を当てない
クライエント中心療法は、精神分析とは違い、過去の話をひきだすことはしません。
自然と、クライエントから過去の話をすることはあるかもしれませんが、カウンセラーが意図的に引き出すわけではありません。

まとめ 精神分析とクライエント中心療法の違い

精神分析とクライエント中心療法の違いは、指示的かどうか、原因(過去)に焦点を当てるかどうか、が大きな違いです。

1.指示的かどうか

2.過去を掘り下げるかどうか

2013年11月 1日 (金)

神経言語プログラミング(NLP)

NLPとは?

NLPとは、神経言語プログラミングの英語の頭文字をとったもので、解決志向アプローチと同じくブリーフセラピーの流れにあるコミュニケーション技法です。心理療法やコーチングとして用いられることがあります。

NLPは、 催眠療法家のミルトン・エリクソン、 家族療法のバージニア・サティア、 ゲシュタルト療法のフレデリック・パールズ の3人の話し方や技法を参考に開発されたものです。

NLPの考え方

不快な感情やネガティブな感情は、出来事に対する反応として脳が情報処理を行った結果として解釈されます。

そのため、NLPでは、自分が何を感じているのかを、感覚器官ごとに分析します。

例えば、誰かに激しく非難されたとします。そしてその時の音は左耳から聞こえたのか右から聞えたのか、音量はどうだったか、その音にはどんなイメージが付随しているか、身体感覚はどのようなものであったか、 のように分析します。

NLPのコミュニケーション技法

○アンカリング

アンカリングとは、記憶や感情が、直接それとは関係ないものと結びついていることです。 例えば、ある音楽を聞くと昔の彼女を思いだして悲しくなる、など。 NLPでは、これを利用して、例えば、ある動作とポジティブな心理状態を結びつけます。 すると、その動作によってポジティブな心理状態を作り出されるという理屈です。

○リフレーミング

リフレーミングとは、フレーム(枠)を付け替える、の意味です。 例えば、「私は失敗してばっかりだ」を「失敗してどんどん成長している」と肯定的に考えることです。 リフレーミングはNLP特有の技法ではなく、様々なブリーフセラピー(短期療法)で用いられます。

○VAKシステム

人の認知を、視覚・聴覚・身体感覚に分け、どの感覚器官を通せば、 相手とのコミュニケーションがとりやすいかを考える技法です。

○アイ・アクセッシング・キュー

accessing cueとは、英語で「近づく手がかり」の意味です。
相手の目の動きによって、相手が考えているだいたいのことを知り、 相手に接近する手がかりとする技法です。


重要キーワード:NLP、神経言語プログラミング、エリクソン、パールズ、サティア

2013年10月31日 (木)

解決志向アプローチ(SFA)

解決志向アプローチ(SFA)とは?

過去記事の短期療法でも少し紹介しましたがここで詳しく解決志向アプローチをご紹介します。

解決志向アプローチ(SFA)とは、ブリーフセラピー(短期療法)の一つのアプローチです。 そのため、解決志向ブリーフセラピーとも呼ばれます。

NLPも短期療法に含まれることがありますが、NLPもSFAも比較的最近のものです。

SFAでは、問題の原因に焦点を当てて分析するのではなく、解決に焦点を当てて介入を行います。

解決志向アプローチ(SFA)では、クライエントが無能でセラピストに頼らないと問題が改善しないと考えるのではなく、実はすでに問題を解決するリソース(資源)を持っていると考えます。

 

偽解決

SFAでは、「クライエントが行ってきた、問題を解決しようとする試み」が逆に問題を維持させているのではないかと考えます(偽解決)

その偽解決のパターンを本当の解決につなげることが解決志向アプローチの目標となります。

 

例外とリソースの活用

問題や症状はいつもいつも生じるわけではありません。あの人に会うといつもイライラしたり緊張したりして疲労がたまる、とクライエントが言っていても、そこには例外が存在します。

嫌いな人に会っても、いつも同じ解決法を使っているわけでもなく、会って疲れるときもあれば疲れないときもあります。

そこで会ってもイライラしないときや疲れないときに、どういう解決法を使っていたのか、イライラして疲れる時とどのような点で違ったのかを知ることによって、クライエントが持っている解決法(リソース)を発見し、介入に役立てます

ミラクルクエスチョン

解決志向アプローチでは、「~クエスチョン」と呼ばれる質問方法がいくつかあります。
ミラクルクエスチョンとは、「奇跡が起こって明日すべてが良くなっていたら、どんな状況ですか?」と質問する技法です。
目標設定を明確にする役割があります。

スケーリングクエスチョン

スケーリングクエスチョンとは、今の状態を点数で評価してもらうための質問方法です。
「最高の状態を10点とすれば、今は何点ですか?」と聞きます。
今の状態を把握したり、前にも良い状態があったこと(例外)を発見したり、より具体的な課題設定のために使われます。また治療の進展具合の目安にもなります。

コーピングクエスチョン

コーピングとはクライエントが過去または現在に行ってきた問題への対処行動のことです。
コーピングクエスチョンとは、 その対処法(コーピング)=リソースを聞き出すことである。

「これまで、どのように問題や症状を対処してきたのですか?」
「どうやって問題を悪化させずにしてこられたのですか?」 と聞きます。
聞き出したコーピングは、課題設定に用いられるが、それだけではなく、 コーピングクエスチョンで明らかになった問題解決方法はもっとするよう促されます(do more)。

Do more

例外や過去の解決方法をもっとするように奨励することです。
例えば、赤ちゃんが泣くと、気が狂いそうになるくらい怒る人に、怒らないときにしていることをもっとするように言ったり褒めたりします。

重要キーワード:解決志向アプローチ、SFA、短期療法、ブリーフセラピー、リソース、偽解決

2013年10月26日 (土)

ストレスコーピング

ストレスとは?

ストレスとは、もともと「圧力」「歪み」「変形作用」などを意味する物理学や工学の言葉から来ています。

ストレスは心理学では、環境からの刺激に対して生体が示す緊張反応を意味します。

ストレッサーとは?

通常ストレスと言うと、子供の夜泣きや上司の愚痴などを連想するかもしれません。

しかし心理学領域では、生体側の変化はストレスと言い、ストレスを生じさせる刺激をストレッサーと言います。なので子供の夜泣きや上司の愚痴はストレッサーと言います。

ライフイベントとデイリーハッスルズ

ストレッサーの種類には大きく2つあります。
1つは、配偶者の死や災害などの急性のストレッサーであるライフイベントlife event
1つは、近隣の騒音や赤ちゃんの夜泣きなどの慢性のストレッサーであるデイリーハッスルズdaily hassles

どちらも誰にでも起こる可能性がありますが、うつ病になったり不眠症になったりするかどうかは、人によって違います。そしてストレッサーが症状を引き起こすかどうかを分けるのは、認知的評価と呼ばれる、個人によって異なる考え方です。

認知的評価

認知的評価には、その人がストレッサーをどのように捉えるかという考えや、自分にそのストレッサーを対処する能力があるかという考えが含まれます。

前者は、一次的評価といいます。
後者は、二次的評価といいます。

過去記事の認知的評価理論でも書いています。

ストレスコーピング

ストレスコーピングとは、ライフイベントやデイリーハッスルズといったストレッサーへの対処のことです。コーピングとは、英語の動詞cope(対処する)から来ています。

ストレスコーピングの方法は人によって異なります。
「イライラしているときに違うことを考える人」「カラオケで気晴らしをする人」「映画を見て感動する人」「隣の騒音でムカついたら、文句をいいに行く人」

いろんなストレスコーピング方法があります。 しかし、コーピングの方法には共通しているところがあり、共通点からいくつかの種類に分けることができます。

問題先送り型と問題解決型コーピング

問題先送り型コーピングとは、名前の通り、ストレスの元である嫌な上司や学校のいじめっ子に対して、何かアクションを起こして、問題を解決しようとする方法です。 ・問題先送り型コーピングとは、ストレッサーとは関係のないことをして気晴らしをしたり、一時的にだけ解決するよな方法です。 今回はストレスコーピングの大まかな説明をしました。 今後はコーピングの具体的な方法や有効な方法についてご紹介します。

 

引用:人間知(ヒューマンリテラシイ)―心の科学

重要キーワード:ラザルス、コーピング、認知的評価、ストレッサー、日常生活いらだちごと、デイリーハッスルズ、ライフイベント

2013年10月20日 (日)

無条件の肯定的配慮

無条件の肯定的関心とは?

無条件の肯定的配慮と訳されることもあります。 無条件の肯定的関心とは、ロジャーズが創始したクライエント中心療法の考え方です。 ロジャーズのクライエント中心療法では、クライエントは自ら自己実現に向かう傾向を持っており、 カウンセラーが行うことは、無条件の肯定的関心共感的理解自己一致の3つのことだけだとされます。

無条件の肯定的関心とは、クライエントが自己実現に向かうための条件の1つなのです。

なぜ無条件の肯定的関心が必要なのか?

無条件の肯定的関心はなぜクライエントが自己実現を発揮するために必要なんでしょうか?

それは、クライエントが自分の経験したことをありのままに受容することができていない、という考えが前提にあります。

クライエントは、小さい頃から、ある行動は親から「良い子だね」と肯定的に扱われ、ある行動は「そんなことしてろくな大人にならないよ」と否定的に扱われて育ちます。 そして、自分の内面に価値観ができあがり、「こんなことを考えてはいけない」「こんな感情は自分は持っていないんだ」と考え、否定されてきた行動や考えや感情は歪曲されます。

この状態は、自分が経験していることと自己概念が一致していない状態です(自己不一致)。 自分はやさしい人間だと思っているが、実際はある人に憎しみを抱いている・・・・ このような状態では、クライエントは成長に向かう自己実現傾向が発揮できません。

そこで、カウンセラーは、クライエントが実際に経験していることや感じていることをありのままに肯定的に受容することによって、クライエントが自分の経験をありのままに受け入れられるようにします。

無条件の肯定的関心(方法)

無条件の肯定的関心を一言でいうと、クライエントが話していることや表す感情を無条件で、価値判断することなく中立的に関心を向けることです。

例えば、カウンセリング場面で、クライエントが「怒り」「憎しみ」「悲しみ」を表現している場合、その感情に対して、

「そんなことで怒ってはいけません」

「自分がだめな人間なんて考えるのは良くない」

「みんな悲しいことの一つや二つあるんだからクヨクヨしない」
などと、価値判断をしないことです。

重要キーワード:クライアント中心療法、無条件の肯定的配慮、受容、共感的理解、必要十分条件、ロジャーズ、自己実現

2013年10月10日 (木)

クライエント中心療法

クライエント中心療法

ここで重要な心理療法をご紹介したいと思います。

クライエント中心療法は、カール•ロジャーズによって始められたカウンセリング技法、心理療法です。来談者中心療法ともいい、以前は非指示的という表現も使われていました。

カウンセリングと言ったとき、狭い意味ではロジャーズのクライエント中心療法を指す場合があります。

カウンセラーの基本的態度

ロジャーズのクライエント中心療法では、クライエントは弱く劣っているものではなく、「自ら成長・成熟に向かう傾向」があると考えます。
それを自己実現傾向といいます。

しかし、自己実現傾向が発揮されるには、ある条件が必要と考えられます。

カウンセラーの仕事は、クライエントの自己実現傾向を引き出すだけだと考えます。
クライエントの自己実現傾向を発揮させるための必要十分条件は、以下の3つの基本的態度です。
この3つのカウンセラーの態度によって、クライエントは自己実現へと向かうと言われています。

○無条件の肯定的感心

クライエントの話を批判や価値判断をせずにありのままに受容することです。

単に受容とも呼ばれます。

○共感的理解

相手に同情したり、自分の経験とクライエントの経験が同じだと考えるのではなく、
どのような状態でどんなことに苦しんでいるのかを中立的に理解することです。

○自己一致

カウンセラーが自分の自己概念と現実の自己を一致させている状態です。
自分はとてもやさしい人間だという自己概念を持っているのに、実際はひどいことをしてしまう状態は自己一致しておらず、自己不一致の状態です。


クライエント中心療法について簡単に説明しましたが、現在も重要な考え方なので、詳しいこは今後説明していきたいと思います。

クライエント中心療法では、カウンセラーが助言したり、指示することはしません。

というのは、望んでいるものや方向性はクライントにしかわからず、カウンセラーができることは、クライエントが望んでいることや方向性を自ら発見できるように手助けすることです。

指示や助言というのは、カウンセラーがクライエントの方向性を勝手に決めていることを意味します。

 

2013年5月 5日 (日)

風景構成法

風景構成法とは

風景構成法とは、心理アセスメントの方法であるとともに表現療法でもある。 風景構成法は中井久夫によって開発された。

風景構成法の方法

1、まず、画用紙にマジックで枠を描く(これは枠付け法と呼ばれ、枠によってクライエントが安心して内面を表現することができるといわれている)。
2、そして川・山・田・道・家・木・人・花・生き物・石の10個の風景を構成する要素を順に描いていってもらう。

3、書き終わったら、付け加えたいものはありますか?と尋ねてあれば描き加えてクレヨンで色を塗る。

4、描かれた絵についてクライエントに内容を説明してもらい、検査者が疑問に思った点を質問していく。

 

2013年3月15日 (金)

DSM―精神疾患の診断基準―

DSMという精神疾患の診断基準をご紹介します。

心理系大学院の中でも臨床心理系大学院を受験するのであればDSMは必須です。

ここでは、知っておくべきDSMの考え方や大きな変化、診断方法の特徴などをご紹介します。

DSMとは?

DSMとは、アメリカ精神医学会:APAが発表している精神疾患の診断に用いられるマニュアルです。

正式には精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、DSM

DSM同様にICDという診断マニュアルもあり、世界保健機構:WHOのものです。

 

DSMの改正の歴史

初期のDSMについては割愛してDSM-ⅢからDSMの歴史を見ていきたいと思います。

○DSM-III
1980年発表。多軸評定という新しい手法を導入したことが特徴である。
障害概念も追加され、診断項目はほぼ倍増した。 DSM-III以来採用されている、多軸評定という手法は、下記の5つの軸によって障害を分析することで、障害を
多面的に捉える。

第1軸・・・臨床的障害、ないしは臨床的関与の対象となりうる他の状態。
パーソナリティ障害および知的障害を除く14個の障害概念が第1軸に含まれる。
第2軸・・・パーソナリティ障害および精神遅滞が第2軸に含まれる
第3軸・・・一般身体疾患(General Medical Conditions)。DSM-IIIにおいては身体状態と呼ばれていた。
第4軸・・・心理社会的および環境上の問題。DSM-IIIにおいてはストレス強度と呼ばれていた。
第5軸・・・全体的機能評定(GAF: Global Assessment of Functioning)。
DSM-IIIにおいては社会適応水準と呼ばれていた。

例えばDSMⅢで診断をする場合、「第一軸:全般性不安障害 第2軸:境界性人格障害 第3軸:なし・・・・」
のように診断する。

○DSM-III-R
1986年発表。DSM-IIIの改正版である。
DSM-IV
1994年発表。ICD-10との整合性確保を図るなどした改訂版。精神障害を16群に大別した。
○DSM-IV-TR('Text Revision' of the DSM-IV)
2000年発表。
○DSM-5
2013年発表予定。ICD-10との統合も検討されている。

現在用いられている自閉性障害(=自閉症)、アスペルガー障害、広汎性発達障害(PDD-NOS) という3つの下位タイプに代わり、「自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)」という1つの診断が採用される。つまりアスペルガー障害と広範性発達障害がなくなって自閉症スペクトラム障害に統一されるということ。

○DSMによる診断の特徴

○多軸診断

上記の通りです。

○操作的診断基準

 各障害を定義し(記述定義)、複数の特徴的病像が認められるかどうか(つまりどれだけの障害の項目に当てはまるか)で操作的に診断を下す。これを操作的診断基準という。

臨床像の記述は、容易に確認できる行動の徴候や症状(例えば、失見当識、気分の障害など)で成り立っており、
観察者側の解釈は最小限しか必要とされない。その利点としは、診断が人によって変わってしまう可能性が低いということである。

○人格障害の診断の特徴
しかし、人格障害=パーソナリティ障害などの診断においては、観察者側が解釈する必要性がより大きい
とされている。

○DSMにおける病因・発症プロセス
 上記の記述的、操作的な立場に基づき、各障害の病因や発症プロセスに関しては、
特定の理論に準拠しない
(十分に解明されているもの(器質性精神障害と適応障害)を除く)
そのため、“心身症”、“神経症”といった診断分類も採用しない。

○複数の診断
複数の診断基準のうち一定の数以上を満たすことで診断を確定する。

DSM-IVでは必要に応じて複数の診断を下すこと(重複診断)が認められている。ただし、階層構造が仮定される場合があり、そこでは重複診断はなされない。 つまり上位の精神疾患とその下位の精神疾患が重複しない、ということ。

2013年2月27日 (水)

夢分析

フロイトの夢分析

クライアントの夢を分析することによってクライエントが抑圧している無意識の内容を明らかにする精神分析の技法。 夢分析によってクライアントが洞察を得ることを目的とする。 フロイトは精神分析の主要な技法として自由連想法と夢分析を重視していた。 フロイトの見解では、夢は無意識的な願望や怒りが歪曲されて生じると考える。 夢が歪曲されて現れる理由は、超自我が意識に無意識的欲求が上らないようにするために、夢の検閲を行うからである、と解釈される。 そのためフロイトの夢分析では顕在夢(覚えている夢)から潜在夢(本質的な夢)を引き出すことが目的となる。

ユングの夢分析

一方、ユングの夢分析は顕在夢が歪曲されたものではなく無意識の内容が圧縮されたものであると考える。普遍的無意識の内容は膨大なため、夢には普遍的無意識の内容が象徴として表れる。そのためユングの夢分析では、その夢にあらわれる象徴を理解することによって個性化の過程を促す。 そのためにユングの夢分析では、拡充法という方法を用いて夢にでてきたテーマを、神話や御伽噺(おとぎばなし)から掘り下げていく場合がある。 大まかな夢分析の考え方やユングとフロイトの夢分析の違いを述べてきましたが、 具体的なフロイトとユングの夢分析の方法はまた次の機会にご紹介します。

2013年2月 6日 (水)

短期療法(ブリーフセラピー)

ブリーフセラピーという心理療法について書こうと思いますが、どこの心理系大学院に行きたいかによって、あまり勉強する必要はないかもしれません。もしブリーフセラピーを専門にしている先生が大学院にいないならば、ブリーフセラピーがどういうものかを簡単に説明できるくらいの基本的な知識を覚えるだけでいいと思います。

短期療法:ブリーフセラピーとは

源流はミルトンエリクソンやグレゴリーベイトソン。 元々家族療法の研究をしていたMRI(メンタルリサーチインスティテュート)を中心に発展した心理療法。短期療法の代表的なアプローチである解決志向アプローチ:SAFを紹介します。

解決志向アプローチ:SFA

インスー・キム・バーグとスティーブ・ド・シェイザー(夫婦)が設立したBFTCでは解決志向アプローチ(SFA)が開発され、MRI的ブリーフセラピーに代わり勢力をつけている。

○解決志向アプローチ:SFAの課題設定

解決志向アプローチ:SFAでは課題の設定が重視される。 課題は、解決に焦点を当てて設定される(CBTのようにセラピストが与えるのではない) 課題は、例外(問題が起こらないとき)患者の過去に行った問題解決に基づいて設定される。 ○課題設定のための質問法 スケーリングクエスチョン・コーピングミラクルクエスチョン・ミラクルクエスチョンなどの質問法を用いて明確に課題設定を行う(well-fomed goal=よく練られた目標を重視)  ・ミラクルクエスチョン・・目標や課題設定(患者が自分で目標を立てれないとき)  ・コーピングクエスチョン・・目標や課題設定  ・スケーリングクエスチョン・・明確な目標設定課題設定   ⇒このような課題は、馴染みがあり抵抗が減るというメリットがある。

○SFAにおけるコーピングクエスチョン

コーピングとは患者が過去(or現在)に行ってきた問題への対処行動のことで、コーピングクエスチョンとは、 そのコーピングを聞き出すことである。 例えば    「これまで、どのように問題や症状を対処してきたのですか?」    「どうやって問題を悪化させずにしてこられたのですか?」 聞き出したコーピングは、上述のように、課題設定に用いられるが、それだけではなく、 コーピングクエスチョンで得た情報はもっとするよう奨励される(do more)。

○SFAにおけるミラクルクエスチョン

患者が自分で目標や課題を立てれないとき、目標や課題設定をするために用いられる質問法 「明日朝起きて奇跡的にすべてのことがよくなっていたとしたら、どんな感じですか」など  ⇒ミラクルクエスチョンで得た情報をもとに目標や課題を設定する。

○SFAにおけるスケーリングクエスチョン

明確な目標設定や課題設定のために用いられる質問法。 「もっと気分や症状が良くなるといいです」と漠然と目標をいう患者に対して、より具体的な目標を設定するため 今の状態を数字でスケーリング(得点化)して、目標となる点数を決める。

○SFAにおける解決に焦点を当てたソリューションクエスチョン

SFAで用いられるソリューションクエスチョンとは、問題の原因やトラウマなどを探すのではなく、 解決に焦点を当てた質問法である(次に説明するコーピングクエスチョンを含む)。          ソリューションクエスチョン←→プロブレムクエスチョン

○Do more

例外や過去の解決をもっとするように奨励するアプローチのこと。

○スケーリングクエスチョン

解決に焦点を当てた評価法でそれ自体が強力な介入法である点でアセスメントとは異なる スケールがあがればクライエントをコンプリメントし、質問でさらに情報を得る。 スケールがあがっていなくてもどうやって悪化させずにしているかを尋ねる(coping)。

○解決志向アプローチ:SFAの基本的哲学

・患者の回復力を前提にしている(≒ロジャーズ)  ・患者は適応的な行動をすでにもっている ⇔ 行動療法(問題や症状を学習不足と考える)     ex.リソース、過去の成功例、例外を利用

○コーチングなどに応用

トレイニング=トレイナーが決めた目標を達成する

⇔コーチング=クライエント自身が目標を主体的に決定する

○NLP(神経言語プログラミング)

グリンダーとバンドラーを中心に開発された心理療法。 MRIで開発されたわけではないが、エリクソンやベイトソンの流れを組む。エリクソンの催眠、パールズ.F.、サティアの影響を受けている。 現在はセラピーだけでなく、自己啓発、コーチング、プレゼンテーションなど多くの分野で活用されている。

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